山の木々が今最高潮に色づいている。
あー、もう冬が来るんだよなぁ。
都会からやってきた人に聞かれた
「田舎の人って冬は何をしているんですか?」
考えた事もない・・・。
冬にねぇ・・。
「そうそう、いろいろあるある」
うちでの話しだと、まず、家の修繕をするでしょ、山の木を切るでしょ、畑の土づくりでしょ、トマトやお芋の農産加工でしょ、ハウスの修繕もやらなきゃ、そうそうシイタケのコマ打ちも、あっ道路も直さなきゃ。
と、山ほど用事はある。あんまり生産性のある仕事はないかもしれないが何かしろ仕事はある。
おそらく、その都会から来た人は、冬は何で稼ぐのですか?といった質問だろうが、そう言われば「基本何もない」のである。
田舎の冬の稼ぎ仕事に「炭焼き」というのがある。
土や石でドーム状の釜を作り、その中に木々をくべていく。そして数日火で燻し木を炭化させるのである。ガスが普及するまでは、それはそれは大したお金になったそうだ。炭俵を街に担いでいくと、帰りには3か月分の昆布やかつお節など海鮮物とキレイな着物と嗜好品を持って帰ってきたそうだ。
時代は流れ、現在は炭としてはウバメガシを主原料とする備長炭等、高級業務用炭を生産されている所もあるが、この辺では普通に樫やナラの木を炭にしている。まだ、この山では炭釜は見るが、ほとんど稼働していない。つまり炭作りはほとんどやめてしまったのである。けど、まだ町内には数件の炭作りをしている方もいる。ほとんどがBBQ用として小売りされている方たち。まだまだ頑張ってらっしゃいます。
私もひと冬、炭作りを経験させてもらったことがある。その時は、単にアルバイト感覚だったので、何も習得できていない。釜の製造にも関わらせていただいたのに、何にも覚えていない。
でも、あの釜の中で木が炭化していく様子、白銀に輝く様子はキレイだった。
炭作りで最も厄介なのが、匂いなのです。「木酢液」って聞いたことがあると思います。あの匂いです。いったん体や洋服に付くとこれはなかなか落ちません。炭窯から出てくる水蒸気を含んだ煙を数百メートル離れている人家から文句も言われたこともある。洗濯物に付くとこれは本当に厄介なのです。別に異臭ではないけど、独特の匂いがあります。これを嫌だと感じる方もいるんですから困ったもんだ。
さて、昨日、国道を軽トラで走っていたら、側道を毛糸の帽子をかぶったオッチャンが、手袋を自転車から落として気づかずに走り去った。気になり車を止め、手袋を拾い、急いでその自転車を追いかけた。
毛糸の帽子から目だけを出し、何事かとこちらをにらみつけた。
手袋を差しだし、「ありがとう」というとまた自転車をこぎ出した。
そのおっちゃんから、あの時の炭焼きの匂いがした。
チョッとつーんとする匂い。
よく見ると、自転車の後ろには炭袋が積んであった。
まだ頑張っているんだなぁ
ノスタルジーな光景だった。
あの遠い炭焼きの匂いが。
おっさんもええ匂いするんやで